君の名は

芸術の秋になって、わたしの映画修行もやっと調子に乗ってきました。今回は新海誠監督「君の名は」です。

運よく封切間もなくだったので、TーJOY東広島の1番シアターにてじっくり堪能させてもらいました。

 

びっくりしたのはその観客の多さ。平日の大シアター1番なのに、6割ぐらいは入っている(いつも平日の夜は2~3割がいいところなのです)ではないですか。若い方もいれば、家族で来られている方々もいます。

 

というのも,わたしにとって新海誠監督はマイナー感全開の監督だったのです。あの傑作「秒速4センチメートル」にしても、アニメとは思えない精緻な風景描写を背景にした、センチメンタリズムの極致のようなストーリー展開。わたしは結構そういう世界は好きなのですが、一般の映画ファンの方にはこんな文学的感傷の強い世界は受け入れられるはずもなく、メジャーにはならないだろうけど、自分は新海誠作品には一生ついていこうと考えながら、当時、文化系シアターの代表であったシネツイン(このたび廃館になり誠に残念です)のまばらな観客(5人ぐらい?)のなかで新海作品を観たものなのです。

 

そんな新海誠監督作品がなぜに?こんなに人気があるのだろう・・?という違和感と疑念を持ちつつ着席しました。おそらくわたしの知らないところで、人々や世界は着々と歩を進め展開しており、そうした過程で新海監督はいまや有名監督になったのかな~?・・なんてとまどいながらの修行が始まりました。

 

映画を見終わって納得。物語の中身は観てのお楽しみとして、上映の終わった場内はおもしろかったという満足感とともに、なにかせつなく、うるっと涙がこぼれるような空気感に満たされていました。

 

わたし自身、もう新海監督は精緻な風景を背に表現された、ひ弱な文学好きのセンチメンタリズムばかりを表現する監督ではなく、痛快ハラハラドキドキのカタルシスを備えた文学的感傷や喪失感を表現できる監督に成長していることを確認しました。

 

素晴らしい成長であり、いまは大人気でメジャーなアニメ監督となりつつある細田守監督のいい対抗馬になりつつあるのかも・・?なんて考えました。宮崎駿監督をなくした日本アニメーション映画界にとっては、飛車と角といえるかもしれません。

アクションやSFなど発想豊かな「動」の細田監督、そしてハラハラドキドキを表現するまでに成長したとはいっても、その作品のコアな部分には、ほろ苦い過去への後悔や憧憬をでんとすえた文学的感傷の漂う「静」の新海誠監督。

 

宮崎監督の長編映画引退発表のあとにぽっかりあいたアニメーション界の喪失感。しかし、本作を観た限りでは細田守監督と新海誠監督、このふたりを擁することによって偉大な宮﨑監督の補完計画を人類は進めているのかもしれない・・・・。

 

な~んて少し大げさなことを感じながら、新海監督ほどとは言わなくても、わたしも日々少しずつは成長していかなければ・・と考えるほどにちょっぴり刺激され、ほろりとさせされた作品でした。

 

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コメント: 2
  • #1

    シネ丸 (水曜日, 14 9月 2016 16:23)

    これも又「シン・ゴジラ」に劣らない大ヒットアニメ作品。 シニア料金鑑賞のシネ丸には少ししんどいとも思いましたが,これも修行と思い切って映画館へ。 予想通り満員の観客はほとんどが20代ばかりで,暗くなるまでは恥ずかしい事限りなしの状況。
    でも映画が始まってみれば,そんな事はまったく関係なし。  美しい映像,想像を超えるストーリー展開,RADWIWPSの音楽,純粋に感動させられた作品でした。
    エンドロールの最中に帰る人も無く(年寄はトイレに早く行きたい!)若い観客はすっかり余韻に浸ってたんでしょうね。

  • #2

    名無し (水曜日, 21 9月 2016 17:14)

    性懲りもなくまたコメントさせていただきます。私正直言って先生のような有識者に一度評価していただきたい願望がありまして、もしよろしければ名前の部分が私のブログへのリンクになっておりますので、お時間のあるときに是非一度遊びにいらしてください。よろしくお願い致します。