ボブ・ディラン来日ツアー

先日、4月19日Zepp福岡で行われたボブ・ディランのライブに行ってきました。ちょうど土曜日の夜だったので、昼過ぎに診療を終え、新幹線に飛び乗って、6時からの開演になんとか間に合いました。福岡は新幹線を使えば1時間余りの場所にあり、ポール・マッカートニーのときもそうでしたが、その気になればなんとかなるものです。それでもこうした貴重な公演にのぞめるのは、大分の友人がチケットを素早くゲットしてくれたおかげでもあります。わたしにとっては1994年の広島厚生年金会館での「ネバーエンディングツアー」以来20年ぶりのライブでもあり、気合の入るところです。前回はこれまた広島の友人がなんと前列まんなか2列目のシートをゲットしてくれたこともあり、ライブ当日は手を伸ばせばそこに彼がいる状況でたいへん幸せな体験だったので、もうディランに会うことはないだろうと思っていただけに今回は望外の喜びなのです。

さて当日ですが、ライブハウスなので、結構近いのではと思っていたのですが、若いころの前へ出る強引さはもうなく、2000人も収容できる箱のなかでは最後尾のゆったりした空間でボブの後光を拝むこととなりました。音楽的にも最新アルバムからの楽曲がほとんどで、最近のわたしの勉強不足からまったく知らない曲ばかりとなってしまいました。

かろうじて「TANGLED UP IN BLUE」、アンコールの「BLOWING IN THE WIND 」「ALL ALONG THE WATCHTOWER」は分かるものの、ディラン独特の曲の改変(これはこれであいかわらず凄まじいものがあり、「見張り塔からずっと」などは、原曲がジミヘンもカバーするほどのギターソロのかっこいい曲なのに当夜はその部分をなんとジャジーなピアノソロでやっていました。ここはジャズクラブか!とまじで思いました)もあり、さびを聞いてなんとかやっとわかる始末。ボブからは「おれはまだまだ現役なんだから、新しく変わり続けるんだ。これでもついてこれるものならついてこい!」とガツンと頭を殴られたようでした。まあこれでもこれからもディランを聞き続けることにはなんのブレもありませんが、このライブで新しいファンはつかないだろうな~と考えてしまいました。ディランからは「おれはやりたいようにやっているだけ。そういう心配は余計なお世話」という彼の幻の声をききながら、博多の夜はかつての親不孝通りにたたずむ居酒屋のうまい地鶏とお酒で更けていきました。

あえて言えば、当夜のディランと彼のバンド(ギターには40代にはとても懐かしいチャーリー・セクストンもいました)はゆったりとした熟練のジャズクラブバンド。これならライブハウスでやるというのも分かるし、これが2014年のボブ・ディランなんだと感じながらの夜でした。

翌朝、福岡アジア博物館で開催されていた「藤子F不二雄生誕80年記念展」を友人と観覧(これが意外に掘り出しもので内容も素晴らしく、これに感動したわたしなどは、帰宅後、久々に藤本先生の大人向けSF奇異短編集を全作再読してしまいました)し、博多駅のラーメン「だるま」で替え玉してから、お土産の「博多通りもん」を買い込んで、もっとディランを聴き込まないといけないなと感じながら新幹線に乗り込みました。