ガウディ×井上雄彦展

気がつけばはや9月。今年は青空に力強くわき立つ入道雲をみる日も少なく夏も過ぎ、朝の涼しさは秋の気配が漂いはじめたことを教えてくれています。そんな夏の日、六本木ヒルズにある森アーツセンターギャラリーにて開催されているガウディ×井上雄彦展にセミナー参加のついでに行ってましたので、遅まきながらこの展覧会の感想を綴っておきます。

井上さんは「スラムダンク」で一世を風靡された偉大な漫画家であり、いまも「リアル」「バガボンド」は愛読書でもあります。宮本武蔵ばりに墨絵で表現する世界もとても魅力的です。現代漫画界の若き巨匠であることは疑いの余地はありません。手塚先生と異なり、寡作なところが残念ではありますが、贅沢は言えません。一方でガウディも建築好きのわたしにとっては、興味津々の人物であり、あの有機的な建築は他に比類のない世界を建築というフォーマットで表していると思います。さてさてそんな天才二人がどんな感じのコラボなんだろうと思いながらの観覧になりました。

会場はおそらく井上さんの意向でしょうが、壁や床までが作品となっており、絵や建築だけが作品ではなく、井上さんもガウディも彼らの人生そのものが芸術作品である・・・という主張に満ち溢れていました。

展覧会の展示を通して、ガウディの有機的建築のルーツには、幼少時代からの自然への畏敬の念があったこと(これは手塚治虫先生とも共通する部分ですね)、最後にはサクラダ・ファミリアの建築にかける聖人(世捨て人と言い換えてもいいかも)のような人間になっていったことを知りました。

そんなガウディに影響されて、井上さんが世捨て人になり、さらに寡作にならなければいいな~と余計な心配をしたりしました。

井上さんもガウディをはじめとして、「偉大な芸術家というものは自然の深遠さや先達の叡智をリスペクトし、それを己の作品のなかに昇華させている」ということをこの展覧会を通して、あらためて実感できました。広島にもこの素晴らしい展覧会が来てほしいな~と思ったりして、ヒルズをあとにしました。