不思議な岬の物語

先日、月曜日のT-Joy東広島のメンズデイにおいて、本作品を観てきました。秋のはじめにカナダ・モントリオール国際映画祭において審査員特別賞グランプリを受賞したと聞いていたので、内容のある作品なのだろうな~?と考え、観たい観たいと思いながらタイミングが合わず、やっと遅まきながらなんとか鑑賞にこぎつけました。

とある岬のはずれにある「音楽と珈琲のある喫茶店」での人々のふれあいと別れのドラマ。ほのぼのとした岬町で起こる人のいい温かい人たちのふれあいのなかに緩やかに物語が進行していきます。最近では「トワイライト ささらさや」とも共通するウォームハッピーストーリーといえます。

最近、邦画を観る癖として「この街はどこの地方で撮影された映画なのだろう?」という癖がついたわたしですが、本作はたいへんわかりやすかったです。これという決め手があるわけでもないのですが、都会にほど近く、明るい陽射しと穏やかな波、陸地は洗練からは程遠い、緑や山やごてごてした道。これらがそろえば東京湾内海側の房総半島ということは青春時代、日本の隅々を車で放浪してきた人間にはなんとなくわかります。

作品にはそうした房総半島のほんわかした時間とそこに住みうつろっていく人々の生き方が素朴と不器用の間を揺れ動きながら進行していきます。こうした不器用な物語設定には吉永さゆりさんは結構はまり役だと思いながら、わたしが大好きな阿部ちゃんの無骨な演技に圧倒されつつ、おさまりのよいハッピーエンドへの物語を、終映まじかで観客がひとりしかいない完全貸し切り状態でゆったりくつろぎながらの鑑賞でした。

ひとつだけ苦言を呈すれば、音楽と珈琲のある喫茶店なのですから、喫茶店に流れる素敵な音楽をもう少ししっかりと作品のなかでかけてほしかったです。

あとで知ったことですが、この喫茶店と女性マスターはなんと本当に実在するのですね。もちろん吉永さゆりさんほどの美しさではないでしょうが、いつかこの喫茶店には機会があえば行ってみたいとも思ったりもし、こんな素敵な喫茶店に自分も関われれば・・なんて夢想してしまう夢のある作品でした。