ソロモンの偽証 ~ 後篇・裁判

先日、平日の真夜中にT-Joy東広島にて本作・待望の後篇を観てきました。前篇はこの後篇への助走であり、いよいよこの後篇・裁判がメインイベントとなるわけで期待に胸を膨らませ入館しました。

前篇でも触れたとおり、本作はサスペンスと銘打っているものの、中学生まさに思春期のさまざまな問題を抱える少年少女らの人間ドラマがその本質であり、犯人捜しよりは中学2年生の男子生徒殺人?に至ったそれぞれの事情が生徒ら自作の裁判によって徐々に開示されていくことがスリルに富んでおり、さらに挿入される教師や親らのそれぞれのサイドストーリーも含蓄深く久々スクリーンに目が釘づけになりました。

物語の最終局面でもなるほど納得という顛末となっており、この結末にも思春期のはかない思いが凝縮されている印象を受けました。この裁判を境にこの先大人の階段を登っていく登場人物たちのその後の物語はどうなるのだろう?なんて続編を期待するわけでもないのですが、いろいろ夢想する余韻のある作品でした。前篇と合わせておすすめの作品だと思います。

前篇ではあまり気づかなかったのですが、それぞれの生徒の心が揺れるシーンや顔の表情などを光の角度や陰影を繊細に映し出すことによって、セリフだけでなく映像によってこころの機微を彫刻的に映し出すことに成功しており、映画ならではの彫の深い表現に胸を打たれました。さすが傑作「八月の蝉」を撮った成島出監督だな~と感心。「八月の蝉」は島の生活や夏といった日本独特の情緒を感じさせましたが、本作も日本独特の学校を舞台とした素敵な人間ドラマに出来上がっており、久々に邦画の王道を観た想いがしました。

ところでこの作品を観ていて思い出した漫画作品があります。それは萩尾望都の傑作「トーマの心臓」です。この作品も思春期の年頃でドイツの学校で寄宿生活(ギムナジウム)を送っていた美少年トーマが突然、自殺したことに端を発する物語なのですが、本作の原作者・宮部みゆきさんは世代的に考えても、少女時代に当時の人気作品であった「トーマの心臓」を読み、(無意識だとは思いますが、)その記憶にインスパイアされて本作の原作を書き上げたのでは?なんていう妄想を抱いたりしました。本作が気に入った方はぜひ「トーマの心臓」もあわせて楽しまれてはいかがでしょうか?そしていつか街で出会ったら、両作品を酒の肴にして楽しく語らいたいものですね(笑)。

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コメント: 2
  • #1

    シネ丸 (金曜日, 08 5月 2015 10:02)

    ミステリアスなテーストの前編につられて,封切日1回目の上映で後編を観てきました。
    先生がおっしゃるとおりサスペンスでもミステリーでも無い内容にちょっと肩すかし。
    原作は未読なので何とも言えませんが,題名に「宮部みゆき」と入っているならもう少し
    それらしい味付けがあってもと思いました。 それとこの裁判以来この学校では現在まで
    15年間暴力といじめが無かったていう話はどうも嘘っぽい気がしました。

  • #2

    tomiyasu motoharu (水曜日, 17 2月 2016 10:06)

    いじめの問題は根がふかいですね。おとながいじめを理解できないといって怪訝なおもいにかられるのは、わたしには、くさいものにふたのようにおもえてなりません。薬物や不正献金、不正受給等々でタレントや政治家がたたかれ放題にたたかれます。これっていじめそのものでしょう。スーッとする快感をみんなで共有して、根本の解決をさきおくりするんでしょう。情操教育というものが形骸化しているのに、とおりいっぺんのことですまそうと家庭も学校も。わがことにかんじません。このよのなか、かたちのうえでもしんじきるというスタンスが必要だとおもっております。