アリスのままで

本作を広島市内で研修を受ける用があったついでにサロンシネマ2で観てきました。50歳の若さでアルツハイマー病を発症したアリスが、自分が自分と意識できる存在でいられる短い夏を中心としたアリスと家族の物語です。

 

普段認知症を診る機会があるわたしとしてはいくら若年性とはいえ進行早すぎ?なんて思ったりはしましたが、それ以外はとてもリアルで泣けてくる物語でした。難病映画は不条理映画となるわけですが、まさに本作もそれを地で行っており、高名なコロンビア大学教授であったアリスが自分の名前さえわからない、人格荒廃を伴った認知症状態になっていく・・。

 

特筆すべきは、この役を演じたジュリアン・ムーアが病の進行とともに顔貌や髪型、表情まで失っていくという過程を迫真の演技で見せています。これならばアカデミー主演女優賞ととれたのも納得の演技です。

 

ラストで最もそれまで反目していた次女が実は最期までよりそう存在であったというのも確かにさもありなんで、なかなかリアルで考えさせられる作品に出来上がっていました。

そしてこの作品の一番の見どころは認知症に侵された認識を持った状態でのアリス自身のスピーチではないでしょうか?


最期の公的なプレゼンスになることを本人はもちろん、家族、知人、主治医たちも認識しながらのスピーチはその内容もあいまってぐっと泣けてきました。アメリカ映画にありがちなべたな場面なのですが、それでもやはりぐっとくるものがあり、映画に限らずアメリカという国の力技によくもわるくも感心したりしました。

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コメント: 2
  • #1

    シネ丸 (水曜日, 22 7月 2015 10:21)

     毎朝ココナッツオイルをヨーグルトにかけて認知症予防に励んでいる私ですが,若年性アルツハイマーは遺伝で知的レベルが高い人が進行が早いと映画で知りました。同じようなシチュエーションで渡辺謙の「明日への記憶」がありましたが,この病気はまわりの人たちにとっても衝撃的な現実なんですよね。 ジュリアン・ムーアは当然ですが彼女を取り巻く家族を演じる役者たちがいい味を出してる映画でした。(途中で送信してスイマセン)

  • #2

    tomiyasu motoharu (木曜日, 18 2月 2016 10:22)

    渡辺謙の明日の記憶、豊川悦治のビューティフルレイン、統合失調症のジョンナッシュ(2015年になくなっていたんですね)をえがいたビューティフルマインド、精神神経のやまいというのは、業な病気ですよね。薬物中毒でもがいている著名人に対して、あれは中毒というりっぱな病気という空気はないんですよね。認知症にかんしても、いまでも痴呆という言葉をつかいます。十分いきております。さすがに精神分裂病というのをつかう方はほとんどおられませんが。レーガンや鉄の女の涙のサッチャーもたしかアルツハイマーだったとおもいます。このひとにしてこのやまいありですね。