セッション

先日、広島市内に用事のあったついでに、サロンシネマ1にて注目の本作を観てきました。

予告編において、若者がコーチと思われる男性から激しく叱咤されながら、大量の汗を体全体から吹き出し、白目をむき、視線がどこかに行っている形相を観たときから、これは観に行かないといけないと思っていた作品です。

 

観終って、やはり映画は映画館で観るものだな~という感慨を思い出させてくれました。

 

物語としては、ジャズの一流プレーヤーをめざす若者が、エリート音楽大学で常に全米のトップ・ジャズバンドを率いるカリスマ教授から抜擢され、その成長を促進させるという教授の思惑から、肉体的にも精神的にも過酷に追い詰められながら、ドラマーとして成長していきます。

その間、やっとできた恋人にも別れをつげ、不安緊張のあまり、命を落としかねない大事故にも遭いながら、なんとかその教授の目指す方向に適応しようとしたにもかかわらず、教授からドラマー失格の烙印を無情にも押されてしまいます。若者は大学も退学し、失意のうちに街を彷徨していたら、なんと因縁の教授と偶然出会い、教授も大学を去っており、もう一度最期の大観衆の前でのセッションに誘われるが、そこに待っていたのは教授のどす黒い、筋違いの復讐。

 

それにもかかわらず、若者はそのセッションを、大観衆を前にして、教授により成長させられたドラミングで乗り切り、教授も人格はともかく、そのプレイの素晴らしさだけは認め、恍惚の表情を互いに浮かべる・・。

 

書いてしまうとなんてことのない、芥川龍之介の「地獄篇」のような、現実にはなかなかありえない物語なのですが、本作は素晴らしいジャズバンドの音色が映画館じゅうに大音響で鳴り響き、しぶき飛ぶ教授と若者のマンツーマンの迫力がスクリーンの大画面で迫ってくると妙に嘘っぽい物語がリアルに感じられ、芸術の素晴らしさとそれに魅せられた魂のぶつかり合いの物語となるのです。

魂と魂が暗闇のなかで火花を散らしスパークすると、観ているこちらまで鼓動が高くなるという体験型アトラクションのようになっており、もし映画館で観る機会があればぜひとも観てほしい作品でした。

 

本作はなんと撮影当時若干28歳の監督によって撮影されたというのもびっくりです。いまの若者はこんな熱い接し方を求めているのでしょうか?・・なわけないと思いますが、どうでしょうか?

 

本作を観ていい気分になり調子に乗り、こんな情熱で若者に向かった日には、今の時代、間違いなくパワハラ、もしくはアカハラで訴えられること必定なのでは?・・なんて考えるわたしはすっかり臆病者になってしまったのでしょうか?それとも確かな現実検討力のあるいい大人になっただけなのでしょうか?・・・

などなどいろいろ考えさせられるところの多い作品でした。

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コメント: 3
  • #1

    シネ丸 (水曜日, 19 8月 2015 09:46)

    シネ丸が「セッション」を鑑賞したのは今から4ヶ月前ですが、今でもあの緊張感がしっかり体全身にしみ込んでいます。 ちなみに84歳になる母親も「あの興奮をもう一度味わいたい」と先日急に言い出したのには驚かされましたが、ビックバンドJAZZ大好きなシネ丸としてもあのサウンドも含めもう一度修行したい作品です。

  • #2

    四季のこころ (水曜日, 23 9月 2015 10:21)

    本作は音の良さが頭と心と耳に残る作品でしたよね。音楽ものの傑作がもっと出てくるといいですね。そうした意味ではイーストウッド監督の前々作を日本ではロードショー扱いしなかって日本の映画界にはややがっかりです。

  • #3

    tomiyasu mtoharu (土曜日, 20 2月 2016 09:13)

    いまのわかものもさとり世代といわれます。ただ、境地ではなかろうと。温度がひくいだけで潜在能力はあるとおもいます。20前後のわかものとはなしをすると、すごくピュアという気がします。ただ、温度がひくいです。しかしながら、あつくなれるなにかはもとめているようにおもいます。Kカンパニーの公演に素人といってもバレー経験者が芸能人が挑戦する番組をみました。すごいしごきです。女性ですからピシャっていう感じです。これはきついでしょうね。あついしごきはなんだか、身にはしみますが、アレルギーはおこさないでしょうね。