ブリッジ・オブ・スパイ

スピルバーグ監督待望の新作「ブリッジ・オブ・スパイ」をT-Joy東広島にて観てきました。最近の彼は製作・総監督や監修というクレジットは結構目にしますが、自らメガホンをとり、制作および監督する作品は貴重であり、脚本はあのコーエン兄弟であり、満を持しての本作となります。

スピルバーグ監督作品は近年、歴史や実話に基づく作品が際立っており、本作もその系譜になります。

 

物語としては、アメリカとソ連との冷戦時代に両国の間でスパイによる情報合戦を繰り広げていた時代に実際に起こった、実在のスパイ交換事件を緊迫感あふれるタッチで描いた作品です。

 

捕らえられたソ連のスパイをアメリカ人として弁護するという損な役回りを押し付けられながらも「国籍や信条に関わらず、人は正義に基づいて裁かれるべき」との信念の下、弁護を引き受けたことに端を発し、その後はなんと両国にそれぞれ捕らえられた米ソ間のスパイの交換交渉を引き受けながら、東ドイツにとらわれた一般学生までをも救出するという離れ業を成し遂げる、保険業務専門の一介の弁護士、ジェームズ・ドノヴァン。彼がその偉業を達成していくまでの足跡をスピルバーグ独特の映像のマジックで表現しています。

 

わたしが相変わらず素晴らしいと感嘆したのは50年代のアメリカやベルリンの風景を見事に再現していることです。スピルバーグは彼自身のこだわりでデジタル技術をあえて使わずに実際の現物でロケをしているとのことであり、アメリカや東ベルリンの50年代当時の街角(50年代のニューヨークの街の再現にはブルックリンに巨大セットを組んだそうです)や銀幕のなかを実際に縦横無尽に走る50年代の自動車たち(これがまた名車が多いんです)だけでも、よくこんなに集めたな~と感心しました。映像ですが、さすがに豊穣というかまったりとというべきか、絹のようにきれいでありながら情報盛りだくさんという映像がこれでもかというぐらいに展開されており、一回切りで観終るのが惜しいとも思える作品になっています。

 

映像も素晴らしいのですが、個人的レベルで一番ぐっと来たのは、「人はときには私的利得からは離れても、公のため、国のため、自らの信条のための行動選択をしなければならないときがある」ということがうまく表現されていることでした。

 

というのは、当時ドノヴァンは家族におよぶ危険のことを考えれば、ソ連のスパイを弁護したり、ベルリンまで乗り込んで、スパイの交換をするなど一民間人がこなすにはとんでもない依頼であり、その依頼を断れば済む話なのですが、断らずにあえて火中に栗を拾うような仕事にのめりこんでいく。誰かがやらねば、この国が危ない、公が危ないという状況はあるわけで、私的にはしんどくなることがわかっていながら、やるべきと感じた公の仕事を信念をもって達成していく彼の後ろ姿には考えさせられました。

 

まさに義の漢(おとこ)です。

 

わたしなども彼と比べれば、まったく矮小ながら、日ごろ公の仕事に従事していますが、本作を通じてあらためて人間の行動においては、公私にわたるバランス感覚が大事なんだなと本作を観て感じたりしながら、まだまだ冷え込みの激しい2月の東広島の凍えそうな夜の月の下家路に着きました。

 

コメントをお書きください

コメント: 2
  • #1

    シネ丸 (火曜日, 01 3月 2016)

     アカデミー賞が発表され「ブリッジ・オブ・スパイ」はソ連人スパイを演じたマーク・ライランスが本命シルベスタ・スタローンを押しのけ助演男優賞を獲得しましたね。
    トム・ハンクスとの男の友情・信頼が築かれていく演技はさすがというしかありません。
    ただ本作は作品賞・脚本賞・美術賞はノミネートどまり,受賞しなかったから言うのではないですが,少し全体的なインパクトが弱い印象を受けました。
    PS:助演女優賞は逃したけれど「キャロル」のルーニー・マーラは可愛かったですよ!

  • #2

    四季のこころ (日曜日, 17 4月 2016)

    トムハンクスとスピルバーグの夢のタッグにしては確かに幾分地味でしたよね。
    「キャロル」は不覚にも忙しさのなか映画館修行を逃してしまいましたので、DVD修行をしようと思っています。ここ最近はまったく甘い修行態勢で反省しています。