祈りの幕が下りる時

本作を今年の冬らしい零下の夜にT-Joy東広島にて修行してきました。

 

阿部寛さん(普段は阿部ちゃんと呼んでいます)は個人的に応援している俳優であり、常に彼の出演する作品は観ておきたいという俳優ですから、当然、封切間もない大画面1番シアターでの修行となりました。

 

もともとはテレビドラマであった新参者シリーズの最終作ということでしたが、わたしはチェックしておらず、特に思い入れのない状態での鑑賞となりましたが、登場人物たちのキャラが憎らしいほど立っており、見ごたえ十分の内容となっていました。

 

過去と現代を行ったり来たりする主人公加賀恭一郎を演ずる阿部ちゃんも本領発揮しており、それを取り巻く人々の過去の恩讐の深さ、人々の営みの儚さ、愚かな欲望が複雑に混在しており、観ているとじんわりとこころの奥に響く作品となっています。東野圭吾の原作としては「容疑者Xの献身」のあの切なく胸をつかまれる感触を思い出させる作品です。

 

ひとつだけ気にかかったのは、物語のラストにかけて、加賀の母親(なんと伊藤蘭が阿部ちゃんの母親役を演じています)の失踪の原因がうつ病であったというように解題されていたことです。しかし、もし彼女が真正のうつ病であれば、失踪していきなり誰も知らない街で仕事をしながら、恋人まで作ってしたたかに生きていけることができるだろうか?という・・こころの医者としては素朴な疑問が残るものの、それに疑問を呈するのは野暮であり、シンプルに物語全体の謎解きの爽快さと人間の恩讐の深さを楽しむべき作品なのだと思いながら、寒すぎる夜空の下、いつものように夜の闇のなかに車を滑り込ませました。