孤狼の血

5月の中旬、さわやかな夜風が吹く気持ちのいい夜に、封切間もなくの本作をT-JOY東広島にて修行してきました。舞台は広島だけにやはりここはしっかり早めの修行です。

 

かつて「仁義なき戦い」シリーズを生んだ東映アウトローシリーズの再来を予感させる東映気合い入りまくりの作品です。封切間近でもあり、当然東映系の映画館T-JOYでもあり、自慢の大スクリーンの1番シアターです。

 

本作はかなりきついバイオレンスものという覚悟をもって修行に向かったのですが、意外や意外そういう要素ももちろんあるものの、印象に残ったのは中盤から終盤にかけて涙が出てくるような情緒的展開でした。役所広司演ずる大上刑事の運命と若手刑事ヒロダイを演ずる松坂桃李くんの孤独な魂のバトン受け渡しのようなテーマとなっており、なんだか見終わってしんみりしてしまいました。

 

それにしても「凶悪」でも感じたのですが、白石和彌監督の迫力ある圧倒的なリアリティのある作風は誰かに似ていると思っていましたが、あの若松孝二監督(傑作「実録・浅間山荘」は今でもわたしの心に突き刺さっている衝撃作です)でした。調べてみたら、なんと若き日に白石監督は若松監督に師事していたことがあることを知り、妙に納得してしまいました。

 

なぜ「孤狼の血」というタイトルなのか?も誰にも腑に落ちるラストシーンも小気味よく、広島に住む大人(さすがに本作は子供にはまだ早いです)には超お勧めの作品になっており、おまけに、広島の街角のシーンにおいても懐かしい鷹野橋のサロンシネマのあの健康階段もでてきたりで、細部にも広島の映画好き人間ならばニンマリと楽しませてくれる仕掛けもてんこ盛りでした。

 

今後の広大卒の刑事ヒロダイの活躍が楽しみになりながら、満足感をこころに満たしながらの帰路になりました。

 

P.S.実は本作は物語と同様に印象に残るのが、リンチの道具として使われる豚の糞。このエピソードは強烈な印象を残すだけに、原作でも出てくるのか?と思いきや小説を読んだ人に伺ったら、まったく出て来ないと・・・。これはどうやら白石監督のセンスのようでした。実は偶然ですが、知り合いに白石監督の高校(旭川にあります)時代の同級生がいまして、その彼から聞いた、白石監督(実はこの名前は芸名だそうです)の高校時代のエピソードからするととても合点がいくものでしたが、それをここでは明かす事はできないので、もし個人的に本作の映画談議になった人にだけいつか酒の肴に語りたいものです。