ボヘミアン・ラプソディ

本作を封切間もない時期にT-Joy東広島の大スクリーン1番シアターにて観てきました。

 

クイーンはわたしが中学時代にリアルタイムで流行っていたバンドであり思い入れも強くあります。

当時は、好きなレコードを買うことができる中学生(当時のLPレコードはおよそ2500円前後もし、いまの貨幣価値にするとおそらくは一枚5000円ぐらいの感覚であり、とても中学生にはおいそれと手を出すことができない代物でした)は限られていました。なので彼らは、どちらかといえば裕福な家庭の、アンテナの鋭い、進んだ女の子らのものだったという印象のあるバンドです。当時は小学生高学年から流行っていたベイシティローラーズにそろそろ飽きた音楽好きたちがクイーンの高い音楽性をかぎ取り、食いついていた感じでした。

 

わたしなどはやっとFMラジオを中心に彼らの楽曲をエアチェック(この言葉自体もう意味がわからない若い方もいそうですね)し、なんとかカセットテープで繰り返し聴いていたものです。当時土曜日の昼2時からのFM愛知(広島ではFM広島だと思います)の「ポップス・ベストヒット10」という1時間番組にかかる彼らのヒット曲は、当時ビートルズバカだったわたしからしても、勢いとリアルタイムの艶があり、ポップでありながらも壮大で、いつも楽曲ごとに曲想ががらりと変わるクイーンの新曲には常に畏怖と興味を覚えていたものです。「セイブ・ミー」「地獄へ道連れ」「愛という名の欲望」などはリアルタイムで聴いた彼らのヒット曲群の一部ですが、今聴いても楽想は豊かで斬新です。

 

申し訳ありません。前口上が長くなりすぎました。さて本作ですが、もう一言で言って、大満足の作品でした。本作で描かれた世界は、別にクイーンの音楽を今まで聴いたことがなくても圧倒的に胸に響くものだったのではないでしょうか。

 

今さらですが、彼らの音楽自体の素晴らしさ、ライブにおけるパフォーマンスの迫力がよくわかる構成になっています。そのうえで、ボーカルかつ楽曲作成の中心であった、フレディ・マーキュリーがさまざまなコンプレックスを抱えながら、音楽の力でそれを乗り越えていく姿が感動的に描かれています。

 

HIV感染に至った同性愛についてはさすがに知っていましたが、生まれつき歯数過剰症であったこと(外観的にはコンプレックスを抱えながら、それを逆手にとって、歯数の多い広大な口蓋だからこそのあの大声量と素晴らしい高音を含む広い音域を誇る奇跡的な発声が生まれた皮肉)、ペルシャ系インド人のゾロアスター教徒である両親を持つ移民の子であったこと(それゆえにボヘミアンラプソディーをはじめとした死と生と愛の葛藤を抱えた内省力の強い哲学的な詩の世界を生み出した事実)などは本作で初めて知りました。しかし、そういった出自をバネに圧倒的に豊かな音楽とパフォーマンスを生み出していった過程がとてもドラマティックに描かれているわけですから悪いわけがありません。

 

またクライマックスであるライブエイドでの彼らのライブ当時、もう大学生になっていたわたしはブラウン管を通してその雄姿を観た記憶がありますが、こうした裏話があったとは恐れ入りました。残念ながらわたしは彼らの生のライブを経験はしていないのですが、この時期にはもう洋楽のライブには行っていただけに彼らの日本ツアーを一度体験しておけばよかったという悔いを覚えるほどよかった映画作品になりました。白状すると、本作を大画面と大音響でせめてしっかり心に刻んでおこうと思い、同じ映画館で3回もクイーン体験してしまいました。久々の心の大ヒット作品になりました。

 

映画のテーマでもあり、フレディのことばかり書いてしまいましたが、テクニカルでありながらポップセンス抜群の七色の音色を奏でるギターをつま弾きながら、「ハンマー・トゥ・フォール」(これってブルーハーツの名曲「ハンマー」の原曲といえますよね)「フラッシュゴードンのテーマ」などの名曲を書いたブライアン・メイ、歯科医への道をあっさり捨ててワイルドなドラムをたたき続け、ときには「レディオ・ガ・ガ」(映画では字幕で訳詞されておりその素敵な歌詞内容も一目瞭然となりましたね)のような名曲を書いたロジャー・テイラーらが同じ時代に同じ場所で出会い同じバンドに属し、音楽という形の激しい化学反応を起こした結果、クイーンの素晴らしい作品群が生まれたことも添えておきます。

 

最後に、彼は晩年に「Hard Life」という作品を発表していますが、まさに日々ハードライフのなかから、切なく素晴らしい作品群が生み出されていったことを知った今はなんだかありがたく日々聴いている自分がいます。まさにマイブームです。

 

最後の最後に、いろいろと書いてしまいましたが、クイーンの音楽はそうしたゴタクなど必要ないぐらい音楽として豊かで素晴らしいものであり、その後わたしもいろいろな音楽を経験しましたが、彼らの奏でるような音楽はその後もなく、まさにクイーンミュージックと言っていい、時代を超えた、人類へのギフトと言っていいほどのジャンルを超えた音楽の金字塔になっています。それらを思い出させてもらっただけでもありがたい作品になりました。映画というメディアの可能性を深く感じる本作でした。

みなさんも是非とも鑑賞されてください。

 

 

P.S.  本作のパンフレットによると、フレディは日本の「ファイブ・リングス」にも興味を持っており、それについての質問を日本スタッフに問いかけるも、日本人スタッフの誰も対応できなかったというエピソードが載っていますが、あの宮本武蔵の魂でもある「五輪の書」にも傾倒していたとはさすがフレディと、こんなささやかなエピソードひとつとっても感嘆させられました。同時代にこういう才人がいて、それを少しでも感じられたことにはほんと感謝です。わたしもフレディが心酔していた日本文化への造詣をさらに深めねば・・・なんて思ったりしました。