アス

秋の気配が色濃く漂い始めた9月の終わりに広島市内の映画館の至宝、サロンシネマにて本作を修行してきました。

 

現トランプ大統領になって以来、アメリカは明らかに右傾化しており、自国さえ良ければ世界がどうなっても構わないという風潮になっている反動として、アメリカ映画界はその風潮に異を唱えるかのように、政治的なメタファーを有する作品が多くなっており、本作はその代表のような作品です。

 

思えば、1986年レーガン大統領によるレーガノミックスに端を発した、富裕層・強者の優遇政策とともに社会的弱者の切り捨て・福祉予算の削減の実行。その後もブッシュ、クリントン大統領らによってそれらの基本理念は受け継がれ、決定的なまでに広がった貧富の差。現在では上位1%の富裕層がアメリカ全体の国富の40%を独占しているという異常事態。それでも現大統領はその1%の富裕層出身であり、その格差をさらに進めようとしている現代。

 

そんな時代に対する異議申し立てのような本作の世界では、貧困に陥り、影の世界に棲むもう一人の自分がゾンビのように蘇り、ある日突然にアメリカ富裕層が住む住宅街で惨劇の限りを尽くすという大変怖い物語ですが、そうした背景を見聞きしていたわたしなどからすると、結構痛快で思わず「がんばれ、ゾンビ!やったれー!」という気持ちにもなって観てしまいました。

 

本作を見終わって、さすがアメリカだと思うのは、社会の表では貧富の格差を広げるような悲惨な政策が進行している一方で、それらに対する明確で過激なアンチ映画も大ヒットしているという事実。これが我が国であれば、なにかと風は一方に傾きやすく、政治的アンチ映画はヒットどころか上映にこぎつけるのも大変なことが想像され、本作が大ヒットしているなんて、アメリカというのはなんだかんだと言っても懐の深い国だな~なんて灌漑にふけりながら、帰路に着きました。