ジョーカー

本作を11月が近い秋の夜にT-Joy東広島にて修行してきました。あのバットマンシリーズ(とくに「ダークナイト」は映画史上に燦然と輝く傑作ですではないでしょうか)に登場する複雑で奇怪で観るものに不快感と恐怖を与える希代の悪漢、ジョーカー。普通のお笑い芸人を目指していたアーサー青年がどうやってあのような奇妙奇天烈な人物ジョーカーになったのかという物語です。

 

ゴッサムシティで、母親から「どんなときでも人を笑顔で楽しませなさい」という訓示を幼いころから与えられ、それを実現しようと日々悪戦苦闘するアーサー。しかし、そんな彼に世の中や周囲は容赦なく悪意を振りまき、結果、拳銃を手にしてしまうアーサー。

 

そんな不条理な世界を相手に奮闘しながら、出生の謎にも突き当たり、最後はさまざまな悪意と不条理にブチ切れてしまい、あのジョーカーになってしまうという物語が2時間と少しの時間にぎっしり詰め込まれています。ここ最近のアメリカ社会の不条理に対する抗議も入っている一連の作品のひとつでもあります。

 

本作を観ていてどうもデ・ジャブ感があるな~と思っていましたが、ラストに明らかになりました。あの70年代の名作「タクシードライバー」です。このことは本作の製作者側もかなり意識していると見えて、ラストシーンでジョーカーの標的になるベテランコメディアンを演ずるのは、なんと「タクシードライバー」で名優の仲間入りをしたロバートデニーロその人なのです。ベトナム戦争の不条理に苦悩していたタクシードライバーを殺して、あの悪漢、ジョーカーは生まれたというわけです。これは偶然でもなんでもなくて、最初から本作を21世紀の「タクシードライバー」的社会的不条理批判作品として制作しようとしたものなのでしょう。

 

わたしとしては、アーサーが拳銃を手に入れたくだりがやや不自然かな~なんて思ったりはしましたが、そんな些末なことより、あの希代の悪漢ジョーカーがこうした経緯をもって生まれたということを知っておくことはこの先のバットマンシリーズを観るためのいい肴となりそうで、やはりこれは映画ファンなら必見の作品だなと思いながら、秋のさわやかな風を受けて帰路に着きました。