今年はどこにも移動しなかったお盆ですが、そんなお盆明けの夜に本作を体験してきました。

 

中島みゆき作のタイトルソングが流れる予告編はとても印象的で、これは観に行かないと・・・と思わせるものがあったので、楽しみにしていました。

 

平成の30年間すべてを通して、大人の事情に翻弄された切ない別れ、成長の過程のなかでの再会、それでもどうにもならないすれ違いを経て、再び巡り合った運命のふたりの物語です。

 

ふたりが離れている間に彼は結婚し子どもができており、彼女のほうは事業を通して世界に羽ばたきながら、挫折体験を経ており、その末に故郷に足を向けるという後に、運命の巡り合いなるか・・という感じで、ラストはハラハラドキドキさせる展開となっております。

 

切なくて、恋しくて、儚くて、さまざまな事情、どうにもならない運命や無常に過ぎ行く時間に翻弄されながら、やっと準備が整い、巡り合うというふたりなのですが、彼の妻の死など、ふたりの再会には倫理的には責められることのない、都合のよい事実がうまく起こっていたり、彼女にしても、友人の裏切りから事業に失敗して失意の帰国をするという絶妙のタイミングなどが、やや偶然というスパイスを塗り込んだ物語を作りすぎたかな・・?と感じたりしました。

 

また運命に翻弄されながらも、過行く時間に自らの意思で抗わず、結局周囲の状況と時間に翻弄されながら、やっとそこにたどり着くというのも悪くないのですが、もう少しふたりの自発的な意思を通した結果としての巡り合いというほうがより感動が深いものになるような気はしましたが、そういうことを考えるわたし自身が人間の意思を重視しすぎで理想主義的すぎるのかもしれません。我ながら困った性分です。

 

しかし、本作は観る人それぞれのこころの鏡にさまざまな陰影を映しこむこと請け合いであり、わたしにしてもなんだかんだ言ったって、ラストシーンには満足しほっとしながら家路に着いた静かな夏の夜でした。

 

P.S.本作の主題歌でもありモチーフともなった中島みゆきさんの「糸」。カラオケで日本一多く歌われた年さえあるそうです。さもありなんで、独立した楽曲としても素晴らしく、映画のなかで美しく切なく流れるこの楽曲は情感をそそり、思わずうるっと来ます。さすがの一言でした。

こうなるとみゆきさんの名曲「ファイト」の映像化を期待してしまうのも当然ですが、おそらく「ファイト」は聴く人それぞれの思い入れが強く、すでに各人のこころのなかで映像化されているのではないか・・というぐらい物語性の強い強烈で感動的な楽曲なので、かえって映画化などの物語化は期待しないほうがよいのかもしれません。それでも観てみたい気もどうしてもしてしまう今日この頃です。いずれにせよ、もし映像化されたら、すごい傑作になるか、とんでもない駄作になるかの二つにひとつでしょうね(^^♪。