思い、思われ、ふり、ふられ

本作を9月のとある月曜の夜にT-Joy東広島にて修行してきました。

 

いまや青春恋愛映画の巨匠・三木孝浩監督の最新作です。原作はあの「アオハライド」の咲坂伊緒です。わたしはまたまた原作を読まずに映画鑑賞だけなのですが、「ストロボ・エッジ」と「アオハライド」に続く青春三部作の最終作とのことです。(なぜかこの二作もしっかり映画館で観ています。)なんと実写版のあとには、アニメ版も控えているという熱の入れ方であり、さぞかしファンの支持を得ている作品とお見受けしました。いつものことながら、わたしの知らない世界ではいつも激しい熱狂や素晴らしい感動がうずまき躍動しているのだと痛感しながら、そのおこぼれをせめて映画という形で体験しようとはせ参じてきました。

 

以前に「アオハライド」や「きみの膵臓を食べたい」などでも書いたと思うのですが、こういった高校青春ものはいい歳して結構好きなのです。個人的に高校時代は大学入試突破という自分にとっては、当時のつらく厳しい生活からの脱出プロジェクト(わたしにとっては大げさかもしれませんが、映画「栄光への脱出」のようなもので当時の実感としてはそれぐらいリアルで切実な問題でした)が大きすぎてゆっくり恋愛(お互い好きあっていたのに十分な時間もこころの余裕もなく、付き合うと決めてからたったの2週間ほどで終わるという悲恋もありました)などする時間などもなく、ろくな高校青春時代を送ってこなかったことへの埋め合わせもしくはレクイエムとしての青春映画巡礼なのかもしれない・・・とこの頃は思ったりします。

 

さて本作ですが。「きみ膵」でカップルを演じた浜辺美波さんと北村匠海さんとの再共演が興味をそそるところですが、彼らがハッピーエンドになると思わせて、いい意味で必然的な肩透かしに会います。でもそれがいいのです。

 

青春はそれぞれの思惑・家庭の事情・出会いのタイミングなど絶妙に絡み合いながら、やがて次のステップに昇華していくなかでの想いや葛藤の揺れを切なく描くという物語でした。いつも感心するのですが、三木監督の映像や光の切り取り方がミュージッククリップの一シーンのように青春の一瞬間を美しく儚く切り取っており、わたしなどはどんなテーマでも三木監督作品なら、その独特の光や音や淡い色が織りなす映像世界に抱かれること請け合いであり、吸い寄せられるように観ています。あまり意識していなかったのですが、これはもうファンと言ってもいい次元なのでは・・・なんて思いながら、本作でも青春の淡い夢や感傷を刺激され、ゆるゆると帰路に着きました。三木監督、今後も素敵な青春の光と影の一瞬を切り取るような作品を期待しています。

 

P.S.ところで、浜辺さんや北村くんは「きみ膵」のころとは違い、もうすっかり大人であり、今回の高校1年生という設定というのはさすがに苦しくなりつつつあるな~と思いながら観ていました。そういう意味では、本作は,浜辺美波さんや北村匠海くんが高校生役として演ずる最後の作品なのかもしれないわけで、「もう映画館では高校生のこのふたりに会うのは最後なんだ」と不思議にしみじみしながら、ありがたく修行させてもらいました。今後のふたりの飛躍を広島の片隅にて真っ暗な映画館の光と影の下で楽しみにしています。