水曜日が消えた

秋の真っただ中のとある月曜日の夜に本作をT-Joy東広島にて鑑賞してきました。気鋭の映像作家の長編デビュー作ということで、タイトルの奇妙さが印象に残っている程度の知識での修行と相成りました。

 

観終わって思ったのは、なんとも摩訶不思議な世界が展開されており、リアリティがどうのこうの・・というよりは、監督の想像力の翼でこんな世界の切り取り方ってどうですか?と提示され、観るこちら側の感性を試されているように感じました。

 

曜日ごとに人格が変わる不思議な青年。事故の後遺症ということですが、さすがにわたしのようなぼんくら医者の目から見ても、こういった病や状況にリアリティはまったく感じません。しかし、もしも自分がそんな立場になって、曜日ごとに7人7様の人生を楽しむことができたら・・と考えると、これはこれで面白い設定であり、子どもの頃、わたし自身よくそんな空想に浸っていたことがしばしばあり、これを大人になってもなお映画作品(しかもメジャー作品)という形でしっかり映像や物語を構築してしまう吉野耕平監督の力技に感服しました。

 

ちなみに本作において、一番わたしの感性を刺激した要素は、上記のような不思議な世界よりも、監督(撮影や照明スタッフの寄与も含めて)の切り取る登場人物、とくに女性たちの画面いっぱいに広がる存在感と人間的魅力です。石橋菜津美さん、深川麻衣さんという女優さんに向けられるカメラというフィルターを通した優しく温かいまなざし。

 

彼女らの魅力はストーリー自体や主人公さえ凌駕しているのでは?と感じるほどフィルムを通してきらめいており、恥ずかしながら本作を観るまでまったく知らない存在でしたが、観終わった後にすぐに彼女らのプロフィールを確認するほどの、魅力的なオーラが暗闇の映画館の大スクリーンいっぱいに展開されていました。

 

こんなに女性を魅力的に撮るとは吉野監督なかなかやります。本作を観ながら、10代のころに体験した、心のうちの理想の少女像を追い求めていた、少女像の構築にかけては右に出るものがいなかった偉大なる映像作家・大林宣彦監督の一連の作品群を思い出したりしました。

 

本作での吉野監督の対象は20代の女性ですが、今後この感性(あるいは手癖?)がどう進化・発展していくのか、今年惜しくも亡くなられた大林宣彦監督の再来なるのか、それとも本作のみの偶然の出来栄えのみで収束していくのか・・・。さてさて次作はどうなるのか?

 

そんな我ながら奇妙な妄想が頭を浮かぶ自分をもまた不思議に思いながら、次作を楽しみに待って居ようと、真夜中のとばりのなか、自らの巣へ戻る秋の夜長なのでした。