名探偵コナン 緋色の弾丸

本作を静かなGWを迎える少し前にT-Joy東広島にて修行してきました。

 

もうわたしが何かを語る必要のないぐらい有名かつ人気シリーズです。実は子どものころ、コナンドイルによるシャーロックホームズシリーズや江戸川乱歩先生、横溝正史先生らの世界にどっぷり浸かり、人の怨念や執念の恐ろしさ、どうにもならないドロドロした世界の強烈さに少年時代に一発かまされ、その後の人生観においても大きな影響を受けてしまった推理探偵小説マニアのわたしにとっては、ドイルや乱歩先生らの原作そのもののほうが、いまだに物語の設定、あっと驚くような恐るべき展開、深い人々の怨念や含蓄や教訓という点において、名探偵コナンはこれら名作の足元にも及ばないのではないかという想いが実はあります。

 

しかし、そうは言っても本作名探偵コナンシリーズは知名度や人気においては、それら過去の遺産を完璧に凌駕しており、世界的人気を博していることは間違いのないことであり、ここまで世界の人に愛されていることには、ホームズ、乱歩、横溝ファンとして、多少の嫉妬を覚えて観てしまいますが、所詮これも中年おやじのひがみかもしれません。

 

いろいろな複雑な思いを抱えての鑑賞となりましたが、本作の楽しみな点は何といっても、毎回変わる舞台です(007やM.I.P.シリーズなどスパイ・探偵ものの定石です)。さらに今回は我が故郷名古屋を舞台としているとのことであり、素直に喜ばしく、名古屋のどんな風景を切り取ってくれるかな~という楽しみを持っての修行に入りました。

 

観終わって、アニメながらの明快さ、スピード感、ハラハラ感満点の相変わらずの素晴らしい出来でした。名古屋については、名古屋城と名古屋港周辺をとくに取り挙げてくれていました。

 

とくに地元では「名港トリトン」と呼ばれる、現在は新名神高速道路の一部分となっている三連橋がかなりリアルに表現されており、思わずニヤリとしてしまいました。

 

思えばわたしにも若き時代があり、その頃この橋は「名港西大橋(めいこうにしおおはし)」と呼ばれ単独の橋として存在していました。当時はまだ現在のような三連橋にもなっておらず、もちろん高速道路でもなく、飛島埠頭と金城埠頭を繋ぐ役割があるもののすぐ北には国道23号線(通称:名四国道)も走っているため実用的ではなく、なんのためにこんな橋を建設したのだろう??という感じのまるでオブジェのような橋(のちに新名神高速道路になることを知るのですが、当時はそんな計画があるとは露知らずまったく存在意義の感じられない不思議な巨大大橋だったのです)でした。その結果建設当時は、夜の帳のもと微かな光に集まる虫たちのように行き場をなくした若者たちのナイトドライブコースもしくはデートスポットとして地元では知る人ぞ知るポイントとして機能しており、夜の街で迷子になりがちだったわたしやその仲間たちなども橋上に車のエンジンを停めて、真夜中を越えて昇ってくる日の出を待ちながら朝を迎えたこともあるという、センチメンタルかつハートビートな世界を演出する謎に満ちた真っ赤に塗られた巨大橋でした。その橋に停めた車のフロントガラスから眼下に見える名港埠頭のやさしげなカクテルライトやコンテナキリンの群れをぼーっと眺めながら、付き合っていた女の子や親友らと、当時の熱い想いや好きだった音楽や文学、これからの進路や未来、人生論などを大いに語りあったりした経験(当時の若き名古屋人なら必ず一度はしてみた行為ではないでしょうか?)などもありました。まさに昼の喧噪から逃れて名古屋の夜にひっそりと棲息するDownTownBoys&Girlsたちにとっては、夜の闇の果てにたどり着く、青春のR&R Night大橋(by佐野元春)だったのです。

 

その橋が30年ほどたち、いまや名探偵コナンの舞台になり、それら思い出のつまった景色を背景にコナンくんが巨大な輝く銀幕のなか迫力満点にジェットボードを乗りこなしながら、目の前を暴れまわっているというだけでなぜかうれしく誇らしくワクワクしながら、青年期の記憶がオーバーラップし、映画上の物語と個人的体験の記憶が激しく錯綜し、映画館の暗闇のなか頭のなかがクラクラしてしまいました。いい歳してお恥ずかしい限りです。

 

結局、コナン少年に軽い嫉妬を覚えていながら、すっかりその作品世界に魅せられ、毎年本シリーズの映画体験をするたびに徐々にコナン世界のファンになっている自分を今回も認めてしまうコナン映画体験でした。来年も可愛く勇気や愛のあるコナンくんの大活躍に期待しています。