フォックスキャッチャー

早いもので3月になりましたね。わたしのほうもやっと1月2月の懸案も片付いて、ブログをゆっくり書く時間が作れるようになってきました。春も近いので精力的に書こうと思っているので、よかったらお付き合いくださいね。

先日、本作を広島での勉強会に参加したついでになんとか時間を作り、八丁座で鑑賞してきました。本作も「アメリカン・スナイパー」に続き実際にアメリカで起こった事件を基に映画化された作品です。

この作品の主人公ジョン・デュポン。彼は、わたしでも知っている世界屈指の化学企業であるあのデュポン社の御曹司(御曹司がこんな大事件を起こして会社は大丈夫か?と考えてしまいますが、これだけ大きい会社になると創業家一族は巨大な人数で構成され、びくともしないみたいです)のひとりです。その彼がオリンピック金メダリスト兄弟と出会い、ともに金メダルを目指し最期、殺害するまでの物語です。

スティーブ・カレルが主人公デュポン本人になりきった不気味なリアリティがこの作品の一番の見どころではないでしょうか。

音楽面では、映画全編にわたり常に流れる物悲しく寂しい弦の低音の響きがジョンのこころの軋みを表現しているようで、なかなか不気味でいい味を出してました。それでも映像は結構明るく、アメリカの大富豪の破天荒な生活ぶりが画面を豪華に彩る一方で、レスリングを通した母親との確執、ジョン自身のこころの闇・・劣等感と虚栄心、誰かに必要とされたい誇り高きプライド、しかし実際の現実による蹉跌・・・などなど陰陽がくっきりと表現されており、映像的にも心理的にも見どころ満載の映画でした。

実際の事件における裁判では弁護側からはジョンの統合失調症説も出ていたそうですが、そんな病的側面に頼らなくても、殺害に至った動機はぎりぎり了解可能なんだと本作を観た誰もが感じる映画である気がしました。それにしてもこうしたありそうにない設定と事件が現実に起こっているアメリカという国。オリンピックで金メダルをとっても生活に困るシュルツ兄弟がいる一方で、生まれながらに広大な原野を有する大邸宅で何不自由なく豪華な生活を満喫しながら、本当に自らが欲しいものを得ることができなかったジョン。このアメリカ社会のひずみも大きなテーマである作品。素敵な佳作であり、いろいろ考えさせられるところの多い作品なので、ぜひわが東広島でもこうした作品が普通に上映されて、東広島の人らとこうした魂を揺らす映画について語り合えれば・・と考えてしまいました。

 

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コメント: 3
  • #1

    シネ丸 (火曜日, 17 3月 2015 11:16)

     アカデミー賞主演男優賞ノミネートのスティーブ・カレルの演技を観たくて発表前日に鑑賞してきました。(結果はご存じのとおり)
    ある映画評論家が「主人公の行動の動機が理解出来ない」といってましたが,シネ丸はそんな事は無いのにと思っていました。  今回先生のブログを拝見して「まったく先生のおっしゃるとおり」と納得してしまいました。
    やっぱし佐藤先生の洞察力・文章力には感心するのみであります。
    シネ丸ももう少し上手に文章が書けたらなあと思う今日この頃です。

  • #2

    fourseasons-clinic (木曜日, 09 4月 2015 17:35)

    神戸からいつもチェックしてくださってありがとうございます。観終わって一か月あまりたとうとしていますが、この映画は観終わったあとになんだかじわじわと記憶の底に残る作品になっています。

  • #3

    富安基晴 (火曜日, 16 2月 2016 08:41)

    わたしは映画をみる時間がありませんで。語られないのですが、おもしろくよまさせていただきます。ないものねだりのなかにおおくのひとがいきているんでしょう。多少のものたりなさがいいのではとおもっております。アメリカンドリームの映画というのは多いですよね。わらしべ長者みたいな。ないないづくしというのも案外わるくないなとおもっております。