クリニックの名前

4月に開院して以来よく尋ねられることがあります。それはクリニックの名前についてです。昔からよく知っている患者さんらからは「さとうメンタルクリニック」とか「さとう心療内科」にすると思ってましたと言われたり、関係業者さんの書類にも時々「西条佐藤心療内科」とか書いてあったりしますから、意外なネーミングなのでしょう。 

確かに開業されている先生方のおそらく9割以上の医院がご自分の名前を医院名に入れておられますし、実際、診療する院長先生自身の名前をつけることはわかりやすいし、クリニックの顔にもなります。わたしもそうしたアドバイスを受けました。

しかし、わたし自身が、勤務医のころ開業を思い立ち始めたときに巷の医院の名前を眺めて「クリニックは私的なものでなく、地域で育まれる公的なものであり、どうせならクリニックの名前を聞いただけで、クリニックの目指すものがわかるような、イメージを喚起する名前にしたい」とぼんやり考えていました。たぶん、そうした言葉選びの感覚には少しは自負もあったのかもしれません。

現実に2年ほど前に開院プロジェクトが動き出したときに、まず名前を考えました。いざ考えるとなかなか難しい。アイデアはいろいろあるのですが、言葉の響きと書いた字にしたときのしっくりさの両立がなかなか難しいのです。紆余曲折を経て、2案に絞られました。わたしの心から紡ぎだされたのは、①「なぎさ心のクリニック」②「四季こころのクリニック」。①については前任病院の認知症治療病棟「ゆうなぎ」において自案が採用されたことがあり、「ゆうなぎ」は人生のゆうべに認知症を患われ、徘徊や暴言、暴力などの問題行動が一時出現し、入院を余儀なくされた患者様に凪(なぎ)をプレゼントできる病棟という意味で、我ながらしっくりうまくいったな~なんて思っていたので、今度は人生のゆうべに限らず、老若男女のあらゆる世代の方々になぎさ(凪さ、渚)に吹く爽やかなか風を吹かせたいとの思いでした。 しかし、なぎさクリニックは湘南方面に多数存在することがわかり、やめておこうということに。

②については希少であり、このホームページのあいさつにも少し書いていますが、子どものころから、わたしは季節(SEASON)という概念が好きで、つらい季節があっても、それは必ず巡り、また新たな季節がやってくることを強く信じていたのです。(こども時代につらいことがありすぎたのかもしれませんね)そしてさまざまな経験を経たいま、それは正しかったと思います。世界や人生は季節のごとく巡り、よくも悪くも確実に過ぎていくのです。我々日本人は、人生観やものの見方を知らず知らずのうちに、巡る四季を通して、考える習性が身についていると思います。その季節に耳を澄ます力を取り戻すことによって病から立ち直ると同時に、人生を豊かにしていきたいとの思いです。

しかし、②にはひとつ大きな問題がありました。それは「四季こころのクリニック」は字にすると長すぎるのです。なんと11字。だからといって「こころ」を漢字の「心」にし「四季心のクリニック」とすると、字数は減るものの、正確に読んでもらえません。「しきしんのクリニック」と誤読さること必定。クリニックの立ち上がりにこうしたイメージのぶれは致命的です。こうした迷いのなかで、クリニックの建築を手掛けていただいた建築家の方から、いっそ「心」と「の」の順番を入れ替えて「四季の心クリニック」は?との提案があり、頭のなかに電球がピカリと光り、『病に惑わされて、四季を感ずる心を失いかけた方々に四季の心を適切な医療によって取り戻すクリニック』という素晴らしいイメージも喚起され、以後はこの名前で決まりでした。

しかし、開院してから気づいたことが。それは「四季の心クリニック」というのは言いにくいのです。もともと「四季心のクリニック」のイメージでそればかりを考えていたせいか、わたし自身は、今でも噛みそうです。なので、いつかこのクリニックが地域に浸透して、もう読み間違いの心配など無用となったときは当初案の「四季のクリニック」にしてもいいかもしれません。そのときはクリニックは成長し、地域のクリニックに名実ともになったのだと思ってくださいね(笑)

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コメント: 2
  • #1

    blueocean (金曜日, 03 5月 2013 00:16)

    私は中島みゆきの「時代」という歌が好きです。
    ♪まわるまわるよ時代はまわる 喜び悲しみ繰り返し 今日は別れた恋人たちも 生まれかわってめぐり合うよ♪
    ♪めぐるめぐるよ 時代はめぐる 出会いと別れを繰り返し 今日は倒れた旅人たちも 生まれかわって歩き出すよ♪
    この歌詞を聞くと、「私は生まれかわることができるんだ!」と思うのです。
    それは決して、この命を絶つということではなく、今この苦しい時代もいつかまわりめぐって、ふたたび歩き出せる日がくるんだ!ということです。
    そんな勇気と希望を、「四季の心」という言葉の中に感じました。
    私に生きる勇気と希望を思い出させてくれて、本当にありがとうございました!

  • #2

    fourseasons-clinic (水曜日, 08 5月 2013 23:49)

    「時代」素敵な曲ですよね。わたしも大好きです。中島みゆきって悲しい曲を歌いながら、その悲しい想いを唄として表現することにより、悲しい心情から脱しようとする、本質的にブルースといえる楽曲が多いですよね。音楽的にはポップスですが、精神的な深い部分においては、日本を代表するブルースだな~と思います。「ファイト」なんかその典型ですよね。