藁の楯

藁の楯をT-joy東広島のメンズデーにて観てきました。三池崇史監督の最新作です。今作も都市の高速道路や鉄道網を俯瞰的に幾何学的に眺める絵づくりは三池監督らしいな~と思わずにやり。

さて映画そのものですが、前作も子どもの不可解な死をテーマにしたたいへん重いものでしたが、本作もテーマは人の理不尽なまでの狂気とそれを凌駕しようとあがなう理性。大沢たかお演ずるSPが少女連続殺害の犯人を職務に忠実にさまざまな攻撃を受けながら、仲間を失うという痛手を経て、それでも護衛をまっとうするという物語。守るという職務上のアイデンティティーを胸に、2年前に妻とお腹の子どもを失った哀しみを乗り越えようとあがく主人公。そこに現れる、理不尽なまでに凶悪な藤原竜也(彼って人格的に荒んだ役柄が多すぎると心配するのはわたしだけでしょうか)演ずるロリコン変態凶悪犯罪者の警護。葛藤の塊と化した主人公が最後に叫ぶ断末魔のような咆哮。

好みの別れる物語だと思います。正直わたしはいまの時代、劇中の主人公のように、職務上において、職務への忠誠、感情の抑制がこれほどまでに完遂できる人物はリアリティに欠けるのではないか?なんて不肖にも思ってしまいました。ひとはなかなかどうして不完全で不安定な生き物です。わたしも日々の臨床のなかで、公私の使い分け、感情の制御の問題はよく考えさせられる難しい課題ですから、余計にその辺りを感じました。

映画のラストで主人公(大沢たかお)と孫を惨殺された富豪老人(山崎努)が警視庁前(桜田門)の路上で対峙する場面の線対称的な絵作りが、三池監督らしい構図でありましたが、作品としては次に期待という出来でした。

 

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コメント: 2
  • #1

    シネ丸 (木曜日, 30 5月 2013 15:31)

    三池崇史監督 「愛と誠」といった珍作もありましたが「十三人の刺客」は時代劇アクションとして非常に楽しめた作品でした。 今回は、台湾の新幹線を使いたくさんの台湾人をエキストラにしてスケールの大きな映画を目指しています。 ただ犯人の藤原竜也・富豪老人の山崎努が画一的な描きかたで、個性的な俳優をキャスティングした意味が不明。  なんか違うよなと思いながらアクションシーンを眺めていました。

  • #2

    fourseasons-clinic (金曜日, 31 5月 2013 15:19)

    確かに今作はどこかでこんなの見たようなという既視感、柔軟性に欠ける物語、真剣にみるには少し陳腐な面がありましたよね。三池監督はツボにはまると素晴らしい傑作を生み出しますが、はずすことも多々あり、振幅の大きい監督といえますよね。