グランドマスター

先日、T-joy東広島において、ウォン・カーウァイ監督の新作「グランドマスター」を封切直後に観てきました。

カーウァイ監督といえば、個人的に甘酸っぱい思いがよぎる監督です。わたしもまだ若く、右も左もわからなかった頃、中国返還前後の香港を舞台にした、漂い揺れ動く劇中主人公の若者を映画で観てたいへん共感し、切ないラストで締めくくられる、監督の出世作「天使の涙」に涙した経験があり、以後「ブエノスアイレス」など脚本にこだわらない即興的な演出(ゴダールみたいですね)なのに、映像美と豊かな情緒を自らの作品において炸裂してきました。なのでわたしもカーウァイ監督の作品はなるべく観るよう努力してきました。(たいていは広島市内のサロンシネマ系列の映画館にお世話になっていました。)

  今回は5年ぶりの新作でもあり、かなり力も入っているようで、地元の映画館で観れるのはうれしい限りです。内容はイップ・マンと呼ばれる、実在のカンフーの達人(あのブルース・リーの唯一の師匠です)が第二次世界大戦前後に巻き込まれた、カンフー世界の盟主争いのさまざまな人間模様を描く物語です。実は東広島地域では上映されませんが、イップ・マンをモデルにした物語はシリーズとして映画化されており、それらを運良く体験済みのわたしなどは、イップ・マンものにはすでに感情移入しやすい状況であり、この話も一連の物語の集大成としてたいへん楽しめました。

そして、さすがカーウァイ監督、優美ながらにきめ細かい画が圧倒的に美しかったです。雨や雪などが街を彩る季節のなか、人々の出会いと決別のシーンはいずれも情緒が深く、艶たっぷりでしたよ。とくにカンフーシーンがいいです。雨粒を滑らかに弾く鉄拳、粉雪をまさぐる蹴り足などなど動きのスピードに抑揚をもたせながらの幻想的な絵作りは素晴らしく、ブルース・リーが生きていたら、俺のカンフーも撮ってくれよといいそうな出来でした。

映画全般としても、十分に総合エンターテインメントとして成立しており、脚本もしっかりしており、かつては即興的な作風でコアな人だけ見てくれればよいという映画が多かったカーウァイ監督としては、新境地の作品でこれからがさらに楽しみになりました。しかし、わたしの見る限り、公開初日の観客は大入りとは言いがたく、やや寂しい入りでした。こんな素敵な作品を映画館で観ないのは勿体ないので、東広島近隣の方はT-joy東広島でやってますので、映画館でぜひ堪能されてくださいね。

それにしてもトニー・レオンってわたしの知り合いにずいぶん顔の雰囲気が似ており(もちろん体はあんなに締まっていませんが)、艶のある画を観ながら思わずそんな彼を思い出し、映画館の暗闇のなかでにやにやしての鑑賞でした(笑)。

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コメント: 2
  • #1

    シネ丸 (水曜日, 12 6月 2013 08:59)

    いやぁ~ 中国スターはやっぱり凄いですよね!  トニー・レオンもチャン・ツィイーもアクションなんかしなくても充分やっていける俳優なのに、カンフーも見事・芝居も見事、日本の俳優で両立出来ている人っていましたっけ?   特にチャン・ツィイーファンのシネ丸は、キレのある奥義六十四手・憂いを秘めた表情に完全にノック・ダウンしました。 雪積もる駅の決闘場面は、映画史に残る名シーンとなるでしょう!

  • #2

    fourseasons-clinic (土曜日, 15 6月 2013 14:46)

    確かにこの作品は名画といえるレベルに到達しています。たくさんの人に映画館で体験してほしい映画ですよね。