凶悪

先日、福山診療の帰り道に、東広島で観ることがかなわなかった「凶悪」を福山シネマモード2にて鑑賞してきました。実はシネマモードが移転してから初見参だったので、うまく映画館に辿り着けるかちょっと不安でしたが、福山の三角公園近くの指定駐車場に車を留めて3分ほどでほどなく着きました。思えば、縁あってもう十年も福山に定期的に仕事で訪れているわけで、福山の街にもずいぶん詳しくなったものです。独特の雑多で混沌とした、この街の雰囲気はわたしの故郷と似通っている部分があり、福山は個人的には郷愁を否応なしにそそられる街です。シネマモードは西条にも欲しいタイプの映画館です。福山のみなさん、地元にあるこのシネマモードを動員という形でしっかり育ててあげてくださいね。
さて「凶悪」ですが、数年前に実際に起こった事件でしたので、話のアウトラインはだいたい知っていました。しかし、やはりこれを映像で直に観ると、その凶悪ぶりに驚きとげんなりが入り混じった感触でした。ときに実話というのは人の想像力を超え、空恐ろしい不気味さを残すことがあるという証左がこの話にはあると思います。

主演の山田孝之くんの事件に徐々に引き込まれていくたびに顔貌が深刻かつ疲労にまみれていく様は観る者にぐっと迫るものがありました。それとピエール瀧とリリー・フランキー演ずる人物の凶悪ぶり。池脇千鶴(あのせつない恋愛映画「ジョゼと虎と魚たち」以来久々にスクリーンでお会いしました)の演ずる主人公の奥さんとしての、彼(山田孝之)の影を映し出す存在としてきらりと輝いていました。ラストに近いところで、主人公に吐くセリフ「あなたはこの事件をすっかり楽しんだんでしょ」というセリフは非常に重いものがあり、この映画のもうひとつのテーマを浮彫にしていました。またフランキーは「そして父になる」との役者としての振り幅が極大であり、なかなか楽しめました。自分の利得のためなら、まったく他者の痛みなど意に介さない、この人物らの恐るべき鈍感さと冷酷が、スクリーンにこれでもかというくらい圧倒的に表現されていました。うーん、久々骨太の表現を観たと胸のすく想いで、福山をあとに東広島への1時間の帰途に着きました。

いったいこの素晴らしい作品の監督は?と思い、調べてみたら、白石和彌監督と。ふうむ誰それ?という印象でしたが、なんとあの昨年惜しくも交通事故で亡くなられた若松孝二監督のお弟子さんとか・・・。「なるほど~それならうなずける」と、思わずうなりました。というのもこの十年の邦画のベスト3に入ると個人的に思っている「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」を撮った監督のお弟子さんならこの快作は撮れるはずです。この映画の深さと重さも納得です。

先年、邦画の至宝というべき若松監督を不慮の事故でなくした日本映画界にとって、この白石監督の登場はまさにギフトのように思え、この作品に運よく立ち会えたことは幸運であり、これから白石監督の作品は必見だとつくづく思いました。

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コメント: 4
  • #1

    シネ丸 (木曜日, 14 11月 2013 09:40)

    そうなんです,先生のおっしゃるとおり!  あの若松監督のDNAが脈々と流れているような白石監督のマグマ溢れる映画でした。 監督第一作でこういった作品が撮れるのは才能はもちろんですが,師匠若松の魂が乗り移っているとしか思えません。 観終わっての爽快感など微塵もない映画ですけど,この新しい才能のデビューをみなさんも目撃してください。

  • #2

    fourseasons-clinic (金曜日, 15 11月 2013 10:17)

    ほんと天の配剤というべきかもしれません。加えて、本文には触れなかったのですが、若松監督は意外にも音楽をうまく(印象的かつ個性的に)使う監督でしたが、この白石監督にもその個性は引き継がれており、映像も音楽も合わせて、今後が楽しみな監督の誕生ですね。

  • #3

    narata (火曜日, 19 11月 2013 16:36)

    この作品、わたくしにはチョッと重いかな~と遠慮しております。かわりに、「悪の法則」キャメロンディアスかっこ良かった。「清州会議」も豪華キャストで…眉なしの鈴木京香存在感ありましたヨ。次は、REDかな~マリリンモンローもあるようです…

  • #4

    fourseasons-clinic (日曜日, 01 12月 2013 22:44)

    「悪の法則」よさそうですよね。わたしもなんとか行きたいのですが、都合がつかず流してしまいそうです。「清州会議」は舞台はわたしの故郷のすぐ近くであり、乗りに乗っている三谷監督ですし、これは必見だと思っています。観てきたらこのブログにも書きますね。