ブルージャスミン

束の間のクリニックの休日、友人と今年最初のビアガーデン詣でをすることになり、少し早目に広島市内に入り、約束の時間の前にシネツインにて本作を観てきました。
最近、世界旅行シリーズに没頭していると思われていたウディ・アレンの新作。久々アメリカのニューヨークとサンフランシスコを舞台とした悲劇です。

かつてセレブ妻だったジャスミン。夫の事業の失敗とともにセレブの座から追われ、妹(姉妹といってもDNAは別で、ふたりとも里子経験をもつ人工的につくられたDNAチルドレンという事実をほんわりと出しています)を頼って、サンフランシスコへ落ちてきたジャスミン。頼ってきた妹にさえ、家がぼろい、彼氏が最低とか言いたい放題の彼女。逮捕された夫はその後、自殺し、奈落の底に突き落とされたジャスミンは独語を話す、精神的に不安定な女性。そんな彼女がなんとかセレブに返り咲くべく嘘を重ね、やっと成功しそうだったときに、なんと偶然!!彼女の夫にどん底に突き落とされた過去を持つ妹の元夫との再会。これにより彼女のセレブ妻返り咲きは挫折。いよいよ崩壊していく彼女の魂・・・。男に運命を任せた女の宿命とはいえ、こんな不運な女性がいるのかと同情を寄せる観客の思いを裏切るかのように、実は夫の没落のきっかけを作ったのはジャスミン自身の密告によるものだったという事実の開示。これで観客の思いは180度ジェットコースターのように回転し、崩壊していく彼女を観ながら、同情することも、否定することもできない不安定な心境を抱かせ、エンディングへ。途中までは、この主人公のモデルはS.フィッツジェラルドの妻ゼルダかな?なんて思っていましたが、観終わって思ったのはこれは現代版チェーホフ作「かわいい女」なのかなという思いを抱き、映画館を後にしました。

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コメント: 2
  • #1

    シネ丸 (月曜日, 16 6月 2014 10:33)

     アカデミー最優秀主演女優賞ケイト・ブランシェット 美人じゃない女優がこういう演技をすれば受賞出来るお手本のような作品です。 以前観た「ハンナ」の悪役も凄かったけど,こういう精神の崩壊を演じれる女優はそんなにはいないでしょうね。 「欲望という名の電車」にプロットとキャラクターが類似しているといわれていますが,ウディ・アレン監督の手慣れた仕事が味わえる映画でした。
    シネ丸★★★★★「チョコレートドーナツ」マルコが可哀そう

  • #2

    fourseasons-clinic (金曜日, 15 8月 2014 10:41)

    たしかに主演女優賞にふさわしい演技。おそらく激しい葛藤とストレスのあまり劇中後半には統合失調症を発症したのでは?と思わせるほどシリアスな場面があるあたり、最近コメディでお茶を濁すことが多いウディ・アレン、久々の真骨頂でしたね。